9月のチームムエット|樹脂の香りは、ひとつじゃない

9月のチームムエット|樹脂の香りは、ひとつじゃない

9月1日のチームムエットは、10月4日の「樹脂の日」への伏線も兼ねて、樹脂の香りをテーマにしました。

今回はいつもの20本より少し絞って15本。
ひとつひとつを、いつもよりゆっくり嗅いでいきました。

樹脂というと、ベンゾインのような、重く深い香りを思い浮かべがちです。

でも並べてみると、ずいぶん違います。

明るくトップノートのように使えるもの。
苦いもの。
青くグリーンなもの。
煙や焦げ、火を思わせるもの。
そして、とても甘く深いもの。

今回のテーマは、香料名を当てることではなく、

「これを調香に使ったら、何をしてくれるだろう?」

という視点で香りを見ることでした。

まずは、明るい樹脂・エレミから

1番はフィリピンのエレミ。

樹脂でありながら非常に明るく、スパイシーさや酸味もあり、トップノートから使いやすい香りです。

参加者からは「シダーウッドにも少し近い」という印象も。

トップに置けるのに、中盤まで香りを引っ張ってくれる。
「樹脂=ベースノート」というイメージを、最初から少し崩してくれる香料でした。

フランキンセンス4種を並べてみる

続いて2〜5番は、すべてフランキンセンス。

    1. フランキンセンス・セラータ CO2
    1. フランキンセンス・カルテリ CO2
    1. フランキンセンス・セラータ 水蒸気蒸留
    1. フランキンセンス・ネグレクタ

同じセラータでも、CO2抽出と水蒸気蒸留ではかなり印象が違います。

CO2は深みがあり、蒸留は軽やか。
カルテリには「乳酸飲料のような甘さ」を感じるという声もあり、ネグレクタには「カビっぽい」「夏の最初につけたエアコンのよう」という表現まで。

同じ“フランキンセンス”でも、植物種、産地、抽出法が変わるだけで、こんなに表情が変わります。

さらに話は、フランキンセンスがどこまで香りとして残るかへ。

トップから使える一方で、最後にはフィキサティブのような役割もしてくれる。石鹸でも樹脂的な部分は残り、ほかの香りの定着にも働くのでは、という実践的な話になりました。

ミルラとオポポナックスから、名前の混沌へ

6番はミルラ、7番はオポポナックス。

ここでは香りそのもの以上に、「ミルラ」「スイートミルラ」「オポポナックス」という名前が、流通の中で必ずしもきれいに整理されていないという話で盛り上がりました。

ミルラを注文したのに、オポポナックスのようなものが届いた経験がある人も。

同じ名称でも植物種や流通経路によって違うものが混ざっている可能性があり、香料の世界は名前だけでは判断できないことを改めて感じます。

そしてオポポナックスを「夏の日差し」の表現に使い、ローズ・アルバと合わせるという参加者の調香例も登場。

こういう、自分では思いつかなかった使い方を知れるのもチームムエットの面白さです。

8番は、樹脂じゃなかった

今回のちょっとした“伏線回収”が8番。

マスティックとして用意した香りでしたが、実際に今回使ったのは、レンティスタ(Pistacia lentiscus)の葉の水蒸気蒸留精油

マスティック樹脂を採るのと同じ植物ですが、今回は樹脂ではありません。

香りは非常に青く、バイオレットリーフにも似たグリーン感。

参加者からは、バイオレットリーフと組み合わせると重さを軽くし、「シャイニー」な感じが出るという話もありました。

同じ植物でも、樹脂を使うのか、葉を蒸留するのかでまったく違う香料になります。

ガルバナム、そして南米のコパイバへ

9番はガルバナム。

強烈なグリーンさを持ちながら、調香の中では春らしさを作るためにも使われる素材です。

植物のどこから樹脂が採れるのか、根元に傷をつけて滲み出す樹液の話にも広がりました。

10番はコパイバ。

ここで一気に産地は南米へ。

爽やかさやスパイシーさがあり、エレミと少し重なる印象もありました。

樹液そのものを使う場合と、蒸留して香料として使う場合では何が違うのか。香り以外のガム質などをどう扱うか、という話にも発展しました。

ラブダナムとシスタス。同じ植物、違う抽出

11番はラブダナム、12番はシスタス。

同じ植物由来ですが、抽出法が違います。

11番はアブソリュート、12番は蒸留。

比べてみると、シスタスのほうを「シャイニー」と感じる声もありました。

さらに、昔はヤギの毛についた樹脂を回収していたという話や、アンバーノート、かつてのオリエンタルノートの話へ。

香りを嗅いでいると、植物学から調香史、文化史まで自然に話が広がっていきます。

「甘い樹脂」だけではないスタイラックス

13番はスタイラックス。

今回使ったものは、甘いバルサム調というより、ドライで、煙、焦げ、火を思わせるタイプ

私には「バーニングファイヤー」という表現がしっくりきます。

同じ「スタイラックス」という名前でも、とても甘いものもあり、ここでも名称と実物のずれが話題になりました。

14番のベンゾインでは、その甘さだけでなく、溶解しにくい成分や濁り、ろ過の話へ。

天然香料を扱うと、香りだけではなく「どう溶けるか」「どう残るか」「何が沈殿するか」まで含めて素材と付き合うことになります。

そして15番はレッドマートル

15番だけは今回の樹脂テーマから少し離れ、前回扱ったグリーンマートルとの比較としてレッドマートルを入れました。

同じ学名でも、採取時期や部位、成分構成の違いによって香りの印象が変わるとされます。

実際に嗅いでみても、グリーンよりレッドのほうがまろやかに感じる、という声がありました。

名前だけでは分からない違いを実際に嗅いで確かめる。
これもチームムエットらしい時間だったと思います。

樹脂は、ひとつの香りではない

今回改めて感じたのは、「樹脂」というカテゴリーの広さです。

軽い。
青い。
苦い。
スパイシー。
甘い。
煙っぽい。
そして、ときには樹脂だと思っていたら葉の精油だったりする。

素材名を覚えることより、その香りが調香の中で何をしてくれるのかを見る。

そんな1時間になりました。

そして10月4日の「樹脂の日」では、今度は精油や抽出物だけではなく、実際の樹脂そのものへ。

見て、触れて、熱を加え、香りの立ち上がりを体験していきます。

9月のチームムエットは、その入口となる回でした。

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チームムエット

ヤマグチミホ

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